猫ちゃんはお家の外に出るのが慣れていないので病院に連れてくる時に嫌がってケージに入れられない子が多いですよね。
でも、少しだけ我慢してもらって健康チェックするのがお勧めです。
「食欲旺盛で元気そう。でも、食べている割にはなんだか痩せてきているかも。
歳取ってきたから若い時よりスリム なのはしょうがないかな。」
こんな風に様子を見るのは怖いかもしれません。
中高齢(8歳くらいから)の猫ちゃんで多い甲状腺機能亢進症という病気が隠れていることがあります。
甲状腺という首にある小さな臓器が拡大し、そこから通常よりたくさんのホルモンが血液中に出て様々な異常を起こします。
進行して末期状態になっていない場合は一見元気に見えます。
甲状腺機能亢進症では甲状腺が腫大(腫れ)しますが、とても小さい臓器なのでご自宅で首を触っても甲状腺の腫れに気がつけることはほとんどありません。
また、病気であってもしっかり食べていて元気なら特に問題ないように思えますが、病気に気が付かず無治療のままで暮らしていると、どんどん痩せてきてしまい心血管系にも悪影響を及ぼしてきます。
【進行した場合】
呼吸が苦しくなって病院に行くと、胸水(心臓や肺の周りに水が溜まる状態)が溜まっていた!
なんとなく高いところに上がらない様子だったのは、実は失明していた!
といったように、重症になってからこの病気が発見されるということも少なくありません。
進行している状況ですので、治療をして緊急状態から脱しても治療には時間がかかります。
時には命に関わることがあります。
では、早いうちに他の症状で早めに気がつけるものはないでしょうか。
【甲状腺機能亢進症の猫で出やすい症状 割合】
- 活動が増える 3割
- 食欲が増える 5割
- 多飲多尿(飲水量と尿が増える) 3-4割
- 時々吐く 4割
- 下痢 2割弱
- 元気なくなる 1割弱
- ぐったり 1割弱
- 食欲が落ちる 2割弱
- 食欲が全くない 1割弱
- 呼吸苦しい 1割
このように色々な症状が出る病気ですが、注目すべきは、食欲が落ちる元気低下のような病気を疑う症状が出ません。
この病気は血液検査でホルモン値を測ることで見つけることができます。
治療は内科治療と外科治療があり、初期の場合は内科治療でコントロールできることが多いです。
犬では滅多にない病気で10歳を超えた猫ちゃんの10%でこの病気が見つかったという報告もあるため、
決してめずらしい病気ではありません。
8歳以上の中高齢になったら甲状腺のホルモンの値を健康診断の血液検査でチェックすることをご提案しています。
ご不明な点はお気軽にご相談くださいね。
引用文献 Carney HC et al. JFMS 2016
Broussard JD. et al., JAVMA 1995