猫の肥大型心筋症は猫の心臓の病気で最も一般的に発見されます。
多くは症状が出た時に診断されることが多く症状がなく進行する時期があるとされます。
また、健康診断で偶発的に見つかるケースもあります。
心筋症の有病率は一見健康そうな猫を集めて15%(7頭に1頭)が罹患していたという報告がありますが、全ての猫が症状を出す訳であはりません。ただ、症状が出た時はかなり重篤であることが最大の特徴です。
この病気についてよくいただくご質問
- 生まれつきですか?
先天性の病気(生まれつきの病気)ではなく、後天性の病気(生まれた後に発症する)です。 - 若いから心臓の病気にはならない?
発症年齢は平均6.5歳ですが、生後4ヶ月から16歳までの猫で罹患し得るとされます。 - 治せますか?
心筋自体を治す治療は現段階ではありません。 - 今までの生活の何かが悪くて病気になりますか?/なりましたか?
遺伝が関与しているとされますがまだわかっていないところが多いとされています。これまでの過ごし方やフードによって病気を発症するということはありません。
心筋症の種類
ガイドラインでは5つの表現型が報告されております。
肥大型心筋症(HCM)、拘束型心筋症(RCM)、拡張型心筋症(DCM)、未分類心筋症(UCM)、不整脈源性右室心筋症(ARVC)
ARVC 以外の多くの心筋症は左側の心筋の病変がでます。
臨床徴候(症状)
主には左室の拡張機能不全による急性左心不全により胸水、肺水腫、心膜液(心膜水)の貯留による呼吸不全です。人と違って自覚症状が分かりにくいため疲れやすいなどの症状で訴えが出ることで診断に結びつくケースはごく稀です。
発見した時に症状がないケース
身体検査では、猫は聴診でギャロップ(過剰心音)があった場合や不整脈(リズムの異常)が聴取された時は高率で心臓の病気の存在を疑うとされます。ギャロップとは馬の早駆けの音に似るので奔馬調ともばれます。
また犬の僧帽弁閉鎖不全症では雑音の聴取で病気を特定できるのですが、心雑音は猫によくある所見で、イギリスの猫780匹の猫を対象とした最近の研究では、健康な猫の40%に心雑音が聞こえることが判明したため雑音が聞こえても半分の猫は正常な心臓をもち、半分は心臓に異常があるかもしれません。また、貧血や甲状腺機能亢進症のようなホルモン疾患があっても雑音が出ます。よって雑音が聴取された場合も血液検査や心エコー検査を受けた方が良いとされます。
症状が出て発見されるケース
最も一般的な症状は突然の呼吸不全の症状です。肺水腫や胸水によって症状がでるため、苦しそうに肩で息をする。お腹の動きが大きくなる。ひどいと口を開けて呼吸をすることもあります。
また、心筋症の猫の16〜48%は大動脈血栓塞栓症になるとされます。(報告によって様々です)その場合は強い痛みと不全麻痺を呈し、来院した時は大腿の足の付け根にある脈が症状がある足だけ触知されません。低体温になっていることもあります。
このように症状が出た場合は命に危険が及んでいることが多くあります。
では早期発見にメリットがあるのか、また早期発見した場合はどのような治療法があるのか。診断や治療について次はご紹介いたします。
参考文献
Payne, J., V.et al. 2010.
Luis Fuentes et al.2020.