お腹が張ってきた 腹水


お腹が張ってきたんです。太ってきたかも?便秘でしょうか?と連れてこられることもあります。

中にはお腹に水が溜まっているかと思って心配になりました。とずばりおっしゃる方もいらっしゃいます。

溜まっている液体の量にもよりますが、外観からみるとお腹がぽんぽんな状態です。
実は稀とは言えないこの症状。猫でも犬でもあります。

大学の循環器科で研修をしていた時はホームドクターから腹水が主訴の患者様が多く紹介されてきました。
腹水イコール心臓病を疑うケースがあり循環器科に紹介されるという流れです。

しかし、本当に心臓病が原因であることもあれば、それ以外の病気も鑑別(腹水がある時に原因として考えうる病気の数々)にあがります。

身体検査で触診したのち、X線検査(レントゲン検査)、エコー検査(超音波検査)で、何が原因でお腹が膨れているのかを確認します。大抵は体重の推移で明らかに体重が増えています。

液体(腹水)が溜まっていると分かった場合は緊急性の高い臓器の異常がないかを確認しながら、腹水自体をエコーを見ながら経皮的に(皮膚を介して)細い針で抜き腹水の検査を行います。

まず、腹水がどんな液体なのか

見た目でも様々です。

  • 血様(血液みたい)あるいは血液のように赤い 
  • 透明
  • 黄色っぽい透明
  • 白くてすこしトロッととしている
  • 黄色い

実際は検査で液体の比重、タンパクの量、細胞の数や形をみて大きく分類します。

そうすると、以下のように分類されます。


腹水の種類

  1. 漏出液:通常あるべく体液が血管やリンパ管にとどまらずに余分に溜まったものとなります。細胞が少なくサラサラである意味水に近いものになります。比重は低く、蛋白も含まれていない、あるいは少ししか含まれていません。
    低アルブミンをきたす病気は腎疾患、消化器疾患、門脈の高血圧(先天的な血管の異常、後天的な肝硬変)などが代表的です。
  2. 変性漏出液:1より成分にタンパク成分が増えます。血管に圧がかかって体液が血管から染み出して出る液体ですので、血液成分が混ざっている体液になります。見た目は血液みたいに真っ赤ではありません。疑う病気で代表的なのは心不全があります。心不全は肝臓から染み出すのでこの性状の液体になります。他にも多くの病気でこの液体が生まれます。
  3. 滲出液:炎症細胞や蛋白が多い液体です。炎症の強さや持続時間によって他の細胞も出てきます。細菌が含まれるような腹水は化膿性になることが多く白血球もいっしょに認められます。
    また、猫の伝染性腹膜炎(FIP)や腫瘍による癌性腹膜炎は非化膿性炎症性滲出液(化膿のない炎症性滲出液)になります。
  4. その他:血液、胆汁、乳び、尿など血管、乳び管、臓器から出る液体があり、上記に分類する場合もありますし、血液は炎症もないただ血液そのままということがあります。

液体の性状検査は、それを行うことで病気の特定に近づくための大事な検査です。

上記のうち、1や2は食欲低下や元気低下などの目立った症状がなく腹水が貯留していることもあります。
元気だけどお腹が膨れて来院されたため、はじめて病気が見つかるケースになります。

普段から体重や体格のチェックをしていただくと早期発見ができますね。

些細なことでも気になることはお気軽にお問い合わせくださいね。

この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。