誤食シリーズ ブドウ・レーズン

ぶどうレーズン中毒について

とても緊急度が高いものになります。

1999年以降アメリカやヨーロッパにおいてでは報告があり、今では一般的によく知られいている中毒物質のひとつです。
は報告がありませんが、犬より食べる頻度が少ないからとされており、犬で強い中毒が知られている以上、医療的に証明されるまでは猫にも与えるべきではないとされ対応は犬と同じ対応になります。

【食べてしまった場合のリスク】
食べた後2日以内(1〜3日と幅あり)に急性腎不全を発症。
嘔吐、食欲不振、下痢も一般的な症状。
食べた犬の15〜50%で、血液検査の異常、急性腎不全、上記の症状のそれぞれか全部が出る。

【中毒成分】
ぶどうやレーズンの成分の何が原因なのかは調べられてきているが特定されていない。
ブドウの種類は赤ブドウ、白ブドウ、ワイン用ブドウ、レーズン、ジュースなど様々な報告あり。皮も危険で、実より危険という報告もあり。

【摂取量】
レーズンで1kgの体重につき3〜36g。
ブドウでは1kgにつき20-30gとか小型犬で4-5個から中毒の報告あり。(巨峰は1個20gくらい)
注意点:食べた量と生存率に相関なしということは少量摂取でも中毒を起こす可能性があるということ。

【治療】
症状がなくても、できるだけすぐに病院で吐かせる。場合によっては麻酔下で胃洗浄。活性炭投与。静脈点滴治療。重度であれば透析治療。(食べてから時間が経っていて消化されてしまっている場合も出来ることを行う。)
血液検査や尿検査で状況を経時的に把握する。

【生存について】
腎不全になった犬の半分は治療すれば生存できるというデータあり。尿が少なくなる(乏尿)、あるいはでなくなる(無尿)になった犬の75%は死亡する。

【対策】 ブドウを食べさせない。ブドウ加工品、ブドウパンやジュースも注意。
     食べたことに気がついた、吐物にまざっていたらそれが少量であっても必ず病院に相談受診する。

最近のインターネットには正しそうな情報もありますが、どれが正しいのか判断できないことが多いです。病院で相談していただくのが一番安全です。
前に食べて何ともなかったから、少量だから、食べてから何もおきてないからと放置しないで動物病院に相談してくださいね。誤食は予防的対処が大事になります。


参考 

  • イヌとネコの腎臓病・泌尿器病 第2版 ファームプレス
  • Eubig, P. A. et al. Acute Renal Failure in Dogs After the Ingestion of Grapes or Raisins: A Retrospective Evaluation of 43 Dogs (1992-2002). Journal of Veterinary Internal Medicine19, 663–674 (2005)
  • Mazzaferro, E. M. et al. Acute renal failure associated with raisin or grape ingestion in 4 dogs. J Veter Emer Crit14, 203–212 (2004)
  • Morrow, C. M. K., Valli, V. E., Volmer, P. A. & Eubig, P. A. Canine Renal Pathology Associated with Grape or Raisin Ingestion: 10 Cases. J VET Diagn Invest17, 223–231 (2005)


この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。