歯周病とは歯肉炎と歯周炎どちらもある状態です。(詳細は後ほどご説明します。)歯石がついていると不衛生だということはよく知られていますが、あまり知られていないのが痛みです。炎症があるので痛みがあり、食欲があるから痛くないというのは誤解です。
犬猫は歯石がつきやすく歯周病は大抵進行します。
犬猫で歯石がつきやすい理由
- 犬猫とヒトでは唾液のPH(液体の酸性、アルカリ性を示す指標)に違いがあります。
ヒトでPHが低い(弱酸性)のに対し犬猫はPHが高い(アルカリ性)のです。
このPHの違いで人は虫歯ができやすく、犬や猫は歯周病が多く硬い歯石が作られやすいとされています。 - もう一つ理由は圧倒的に歯の表面の汚れを落とす機会が少ないことにつきます。以下の歯石がつく過程をみると納得です。
歯石がつく過程から歯周病予防(=歯石予防)対策を考えてみましょう。
1、食べかすと細菌の塊である歯垢が歯につく。
歯垢は取り除かなければ48〜72時間程度で歯石という固い石に変わります。
歯垢から歯石変わるスピードは犬では3〜5日、猫では7日かかるという報告もあります。
→→歯磨は毎日できない場合も3日に1回を目標にしましょう。
表面を拭くタイプのものから練習して、少しずつ歯ブラシの練習もしましょう。
犬猫用専用歯ブラシを使いましょう。
犬口ケアは指につけてふけるので拭きやすいです。犬が間違って飲み込んでしまうリスクも低いです。犬猫専用のものは工夫がされています。左の写真の泡雪Ⓡは毛が密なのが特徴です何度もごしごししなくてもいいですね。
2、歯石の中の菌は死にますが歯石の表面はざらざらしているので、歯垢がつくための土台になり歯垢がつきやすくなります。→→歯石にならないようにすると歯垢も付きにくいのですね。
3、歯垢がつくとその中に含まれる多量の細菌が炎症を起こします。それが歯肉炎になります。
→炎症を予防する外用薬があります。週に2回からスタートして1−2週間に1度の回数で継続します。
インターベリーαⓇは医薬品として歯周病細菌への抗菌作用が認められた医薬品です。
犬猫どちらにも使用できます。
ペーストを塗り込むだけなので歯磨きできる場合はもちろんのこと
歯磨きができない場合も使用によるメリットがあります。
4、歯肉炎だけだと歯茎以外に炎症は波及しないのですが、歯肉炎で歯茎が腫れ、歯と歯茎の間の生理的溝が深一層広くなり歯根(歯の根本)側にも炎症が波及し歯周炎になります。歯周炎は歯根の組織が破壊される状態のことです。歯肉炎と歯周炎が合わさって歯周病と呼ばれます。
→→ここまでくると、一度麻酔をして歯根まで綺麗にすることが推奨になります。
歯と歯茎の間に歯石があると大抵は歯周病に進行している状態が多いのです。
歯周病の怖いところ
- 痛い
- 歯炎症は歯の根本の骨の方まで炎症が波及している状況で痛みがあります。食欲があって歯がグラグラしてないからと言って何も感じていないわけではありません。
- 歯が抜ける
- 歯と歯茎の間の隙間が広がります。(アタッチメントロス)歯と歯茎の間の組織が破壊されなくなることにより、ポケットが下に下がり歯がぐらつきます。歯が抜けてしまえば炎症は納まりますが、すぐには抜けずに痛み、炎症や感染が持続します。
- 菌血症のリスク
- 口の中の多量の歯周病菌が血液に入り込み、体の他の場所にも病気のリスクが出ます。心臓、肝臓、腎臓、あるいは糖尿病のリスクなど報告があります。
歯を一本でも多く残すためにできること
- お家の子の歯周病レベルはどのくらいでしょうか?動物病院でそのレベルを見てもらいましょう。
- 歯石の程度や歯周病(歯周炎、歯肉炎)があるのかどうか?抜歯をするまで進行しているのか?
- 視診の他に歯周病のレベルがわかる簡単な検査もあります。
- 表面の歯石だけ取り除いても歯肉と歯の間の溝の深いところに歯周病菌がいると歯周病は進行して結局歯は抜けてしまいます。
日頃の歯磨きケアはそれぞれにあったものを動物病院でお家の方やその子ができるケアをご相談しましょうね。