異物誤食への対応

異物誤食の先回り治療についてご紹介します。

まず、異物誤食の対応は奥が深いと知ったのは10数年前に夜間救急病院に勤務してからになります。

近年はインターネットで情報を得られ”誤食””誤飲”を調べると早く病院へと書いてあるせいもあり、夜中でも慌ててオーナーさんが連れてこられました。救急病院のため一般病院の比ではないくらい多く来院されました。

異物誤食をした子のオーナーさんは焦って連れてこられるのですが、ほとんどの子達は症状が(まだ)ない時に来院されるので元気なことが多いです。

食べてしまったものによって対応が違いますが、最も大事なことは予測されるリスクをゼロに近づけるために先回りして治療する(症状が出ないよう、あるいは最低限になるように予防をする)ということです。

症状がないから様子をみましょうでは、症状が出てから治療法もなく重傷化してなす術もないというケースがあります。それをオーナーさんにご説明するにはこちらの知識と経験が必要でした。また、リスクが低い誤食に対し過剰に対応するのも良くないのでそこの判断がとてもバリエーションがあり難しく奥が深いと思った所以です。

また、誤食といえば中毒を思い浮かべ解毒剤を使えば?と思われることも多いのですが、生活している中で食べてしまうもののほとんどのものには解毒剤は存在しません。

誤食物には先端が尖っていて物理的に危ないもの、消化管で吸収されると中毒をおこすようなもの、中毒物質ではないけど消化不良、腸炎や膵炎を起こすもの、など様々な種類があり、対応が一つ一つ異なります。

【誤食してしまった時に】

  • 飲んでしまった、食べてしまった時に症状が無くてもまずは動物病院に相談しましょう
  • このくらいの量は大丈夫だろうと自己判断は危険です
  • 自宅で塩を飲ませる、水を飲ませるなどの応急処置は控えすぐ動物病院に相談しましょう
    その処置のせいで具合が悪くなったり、その後の治療の妨げになることもあります
  • 誤食したものの残骸、あるいは同じものがある時は捨てずに病院にご持参ください。吐物や便があればそれもご持参をお願いします。
  • 異物を便にでるように流そうとして追加でフードやおいもをあげるのは避けてください

繰り返しになりますが、異物誤食は症状がなくても食べてしまって直ぐに対応するのが一番大事です。
病院ではできる限り負担の少ない方法でリスクを軽減しますが、薬や点滴で対応困難で時には外科的にお腹を切って取り出さなければいけなくなることもあります。その際に、内視鏡も低侵襲な治療の選択肢として活躍することがあります。
過去に他院で外科手術の選択しかないと言われた子がセカンドオピニオンでいらっしゃり内視鏡で無事摘出できた時のオーナーさんの喜びを見ると改めて低侵襲な治療の重要さが身に染みました。

内視鏡は消化器の病気の診断以外に異物誤食の時にも活躍します
小型犬や猫にも入る内視鏡の直径が細いものもあります。
2台目でメインの機械の急な不具合にも対応できます。


お困りの際は気軽にご相談いただければと思います。

この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。