「もしもししますね~」でわかること

診察中に必ず行う聴診。
つい「もしもししますね~」と言ってしまいます。

聴診器で心臓から聴こえる心音、肺から聴こえる肺音、お腹からは蠕動音という腸の音から、その子の体の情報を得ます。呼吸器の病気では喉の音を聴くこともあります。音の質、強弱、そのリズムや速さを聴いています。

心音にはもともと聴こえるべき生理的な音もありますが、異常音が聴こえると病気のヒントとなることもあります。

犬では小型犬の85%が13歳までに罹るとされている弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症)という病気は心雑音で罹っている事がほぼほぼわかります。この病気は進行すると命を落とすこともありますが、初期はなんら症状が出ません。明らかな症状が出ていない元気な段階で早期発見が可能なんです!
もちろん、確定診断や病期の詳細なチェックには追加検査が必要になりますが、身体検査で病気が早期発見できるのはすごい検査ですよね。

では、猫はというと健康な子でも3割から4割で雑音が聴こえるという報告があります。
これは猫特有なところもありますが、〝雑音イコール病気”というわけではないという事になります。
しかし、猫ではギャロップ音と呼ばれる特殊な心音や心音のリズム異常が聴こえたら、猫で多い心筋症という心臓病がある可能性が高いという報告があります。この病気も症状がなく元気に見えてこっそり進行します。
やはり早期発見して適期が来たら治療を開始するメリットは大きいです。

過去に元気なのに病気が見つかるのは悲しいというオーナー様もいらっしゃいました。
ただ、これらの心臓病に関しては早期発見し、定期検診しながら必要な時期来たら治療を始めることで元気な状態を伸ばせるという大きなメリットがあると思います。

「もしもししますね~」の時にたくさんの情報を得ています。
怖がらないように気を付けていますので、是非聴診させてくださいね。

この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。