外耳炎 4

比較的遭遇しやすい耳の疾患といえば、外耳炎です。この外耳炎はさまざまな要因が重なって起こるとされていますが、その要因ごとに分けて外耳炎を考える分類方法を「PSPP分類」と言います。

外耳炎を「PSPP」分類で要因ごとに分類することによって、適切な診断・治療を行うことができます。

 前回は「憎悪因:Perpetuating factors」についてお話ししましたが、今回は「素因:Predisposing factors」についてご紹介していこうと思います。

【PSPP分類】

主因       Primary causes

副因       Secondary causes

憎悪因   Perpetuating factors

素因       Predisposing factors

この主因、副因、憎悪因、素因の頭文字をとって、PSPP分類と呼んでいます。

【素因 Predisposing factors】

 素因とは、外耳炎が起こる前から存在し、外耳炎の発症リスクを増加させる因子のことです。ただし、この素因があるからといって、素因単独で外耳炎が発症するわけではありません。

耳の形態的問題耳毛過多、垂れ耳、細い耳道
湿性環境高温多湿、水の侵入
閉塞性病変ポリープ、腫瘍、猫のアポクリン嚢胞腺腫
原発性中耳炎 
全身性疾患免疫抑制状態、衰弱
他の治療の影響抗菌薬による常在細菌叢の変化、過度な洗浄処置などによる外傷

耳毛が多い子や垂れ耳の犬種、フレブルさんなどの元々細い耳道を持つ子たちは、確かに外耳炎が多い印象があります。
ただし、あくまでこれらは外耳炎の素因であるため、最初に紹介した主因が重なることで、外耳炎が発症しやすくなります。

 PSPP分類についてご紹介していきましたが、いかがだったでしょうか。外耳炎と言っても、実は様々な要因が絡んで発症していることがお分かりになったでしょうか。

 外耳炎は比較的遭遇しやすい疾患ではありますが、放っておくとなかなか治りづらい疾患でもあります。耳からいつもと違う臭いを感じたり、耳を痒がる素振りが見られたら、早めに動物病院へご相談くださいね。

当院は早朝7時から(日曜祝日は9時〜)完全予約制で診療を行なっている渋谷区の動物病院です。
夜間に体調を崩して朝も治っていない場合やお仕事やご用事の前に診察をご希望される場合もご連絡ください。
注意:WEB予約が空いていない場合、緊急時はお電話でお問い合わせください。

この記事を書いた人

獣医皮膚科認定医 門岡友子

この度「めぐり動物病院 元代々木」にて皮膚科専門診療を任されることとなりました。
皮膚疾患は動物病院への来院理由でも常にトップ3に入る疾患です。
また、アレルギーや感染症、免疫介在性疾患、腫瘍など、原因が多岐に渡るのも皮膚疾患の特徴です。
そのため、皮膚疾患の原因を一つ一つ丁寧に紐解き適切な診断を行い、ご家族に寄り添った治療を提案してまいります。
ワンちゃんネコちゃんの皮膚疾患にお困りの方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

経歴
・麻布大学獣医学部 卒業
・Vet Derm Tokyo 皮膚科第1期研修医
・ヤマザキ動物看護専門職短期大学 非常勤講師
・日本小動物ケースベースド情報ネットワーク(JCABIN)皮膚科担当講師