鼻血

犬と猫で鼻血が出た場合は少量であっても基本的には動物病院に相談したほうがいいでしょう。
鼻血は医学的には鼻出血とも言います。
鼻血にはどんな原因があるのかご紹介させていただきます。

ヒトでは鼻血は幼児や高齢者および男性で冬季に多いというデータがあり、ほとんどは自然に治るものとされているそうです。人口の約60%の人が生涯に1度は鼻血を経験し、6%の人が病院を受診するというデータがあります。病的な鼻血は耳鼻咽頭科の緊急疾患のなかでは最も一般的なもので時々死因にもなるそうです。

ヒトの鼻出血についてもう少し言及すると、原因は局所性(鼻自体の問題)全身性疾患の2通りです。局所性の病因には、外傷、上気道感染、アレルギー、または真菌感染によって二次的に生じる鼻炎、腫瘍形成、刺激性の局所薬および吸入薬などの鼻腔または副鼻腔に限局した異常があげられ、全身性疾患には、出血性疾患 (例: 血小板の遺伝性および後天性疾患、凝固障害、血管疾患)、全身性炎症性疾患 (例: ウェゲナー肉芽腫症、サルコイドーシス)、高血圧があるそうです。しかし、鼻出血の 80% ~ 90% で原因が特定できないことがありそのような場合は特発性または特発性鼻出血と呼ばれるそうです。

犬と猫の鼻血も原因は局所性と全身性に分けられます。

犬では鼻血という症状について振り返った海外の報告で以下のようなデータがあります。

アメリカのペンシルベニア大学病院では5年間のうちに鼻血を主訴に来院された犬は176 頭でした。有病率は0.3%でした。176頭のうち、最初に救急病院にかかったのが132頭だったそうです。全体の犬のうち 115 頭(6割強)の鼻血の原因が特定されました。これらのうち、90 匹 (78%) は局所性の異常で25 匹 (22%) は全身性の疾患と分類されました。

局所性の鼻血の原因
局所性は鼻腫瘍 30%、外傷 29%、特発性鼻炎 17%、および根尖周囲膿瘍 (歯周病)2% という内訳でした。
外傷の犬のうち 2 匹と特発性鼻炎を呈した犬のうち 2 匹は、血小板減少もありました。鼻出血の原因となった全身性疾患を持つ子の内訳は重度血小板減少症10%、血小板減少症6%、血液凝固異常3%、高血圧2%、血管炎1%だったそうです。重度の血小板減少症の犬1匹と高血圧の犬1匹は血液凝固異常も併発していました。

鼻出血をした犬で多かった因子は、高齢 (6 歳以上)大型 犬(26 kg)である傾向がありました。


局所的な原因が見つかった犬は両側性鼻血よりも片側性鼻血の可能性が高いものの、全身性疾患の犬 21 匹中 11 匹 (52%) も片側性の鼻血だったというデータでした。また全身性疾患の犬は、鼻血以外の他の症状を示す可能性が高かった
鼻血の持続時間 (急性 vs 慢性)や重症度、入院期間は、局所性と全身性疾患の違いによって差はなかったようです。

鼻血は犬に比較的よく見られる疾患であり、しばしば緊急事態とみなされることがこのデータからわかります。
また、鼻血は局所性の原因が多いようです。
また、全身性疾患が原因であれば両鼻ともに症状が出ると思われがちですが、半分の子は片側からの鼻血だったようです。これは、鼻血の症状からは局所性の原因なのか、全身的な原因なのか判別つかないということを表しており、どちらの原因である可能性も考慮して、用心深く原因特定の検査を行うべきであることを示しています。

猫では鼻出血についてのまとまったデータがありませんでしたが、鼻水にフォーカスを当てたデータや過去の経験から考えると、犬と同様に腫瘍や感染のような局所性の原因である可能性が高井ことや、全身性疾患は比較的少ないことなどがあると考えます。

まとめ

犬猫で鼻血(鼻出血)は一般的ではなく、生理現象であることは少ないため注意が必要。
原因の特定のためには血液検査、レントゲン検査を含める全身的な検査も追加すべき。
時として命の危険にまで及ぶ疾患が隠れていることが少なくはない。

参考文献:Sally A. Bissett et al. JAVMA 15 Dec 2007

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この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。