下痢は便の流動性が増加する症状で通常は排便回数が増え、便の量が増えます。
ほとんどの下痢は軽度で自然に治るため診断や治療が最小限、あるいはされないこともあります。
急性下痢と慢性下痢は14日続くかどうかで定義されています。
下痢の状況や便の回数や便の見た目で下痢が小腸由来か大腸由来か区別されます。
ただ、多くの場合は大腸性の下痢と小腸性の混合の症状を起こします。
有病率
どのくらいの確率で発生しているのでしょうか。
過去の報告で犬と猫43万頭をまとめたアメリカの報告では診察で胃腸炎と大腸炎が上位19位にのぼり、猫では一般的な診断とされていないことが書かれていました。
また585頭の2歳までの犬を追跡したノルウェーの研究では下痢と嘔吐の発生率が調査され、以下のようなことがわかったそうです。
- ほとんどの犬は期間中に下痢や嘔吐を一度だけ経験。
- 同じ犬で下痢と嘔吐の間には関連性が見られましたが、通常、下痢と嘔吐が同時に起こることはない。
- ワクチン接種と駆虫を受けているにもかかわらず、若い子犬で下痢と嘔吐の頻度がはるかに高かった。
- 下痢は、生後7~12週の子犬の16%から、生後12~18か月の犬では5.4%に減少した。
この研究では、嘔吐と下痢の頻度は子犬で最も高く、年齢が上がるにつれて減少することがわかったそうです。これは、「胃腸炎(胃腸炎)」が3歳までの犬では一般的であるものの、それ以上の年齢の犬は減ることを示しました。
また下痢は一般的に一度ご自宅で様子を見られることが多いこともわかりました。
イギリスの772頭の犬を対象とした研究では、70%の犬では下痢は1~2回のみで、78%は2日以内で治っています。また動物病院を受診したのは下痢を起こした犬のわずか 10% (嘔吐した犬の 5%) だったとあります。 7 日以上下痢が続く場合は全ての犬が動物病院で診てもらっていました。
急性の下痢で来院するかどうか迷われることも多いようですが、以下の点は受診するポイントになると思います。
- 幼齢である。特に3−4ヶ月齢未満の若い子は体の体液量が少ないために少しの下痢でも脱水しやすいので注意が必要です。老齢の場合も普段から脱水傾向にあることや内臓機能が低下している可能性があり、軽度の症状でも全身状態の低下が早い可能性があります。
- 嘔吐がある。特に2回以上の場合は注意が必要です。全身状態が悪くなりやすいこと、単純な急性下痢ではなく他の疾患との鑑別を要すことが多いとされます。
- 大腸性の下痢は通常排便回数が多いですが、その下痢が繰り返され消耗している。例えば夜中眠れずに下痢をしている場合
- 元気や食欲がない。下痢の際はわざと一時的に食事を休んでいただくことがあります。それは48時間までとされています。また、軽い下痢であれば元気や食欲が落ちることは少ないことが多く、元気や食欲がない場合は他の疾患との鑑別を要すことが多いとされます。
- 慢性疾患がある。下痢による脱水が慢性疾患を悪化させる可能性があります。
これらの場合は注意が必要です。迷われる際はご連絡をいただくといいでしょう。
次は急性下痢の機序や治療についてご紹介します。
参考文献
Hubbard K, et al Vet Rec. 2007
Candellone A, et al. Antioxidants (Basel). 2020
Sævik, BK et al.Acta Vet Scand 2012
当院は早朝7時から(日曜・祝日は9時〜)完全予約制で診療を行なっている渋谷区代々木上原、代々木公園に近い動物病院です。
夜間に体調を崩して朝になっても良くなっていなくてご心配な場合や、朝からお仕事やご用事がある場合など、早朝の診療をお勧めいたします。
セカンドオピニオンにも対応しております。