子犬の風邪を通称ケンネルコフと言います。ケンネルコフは犬の上部気道感染、別名犬伝染性気管気管支炎と呼ばれる症候群です。
厳密にはコフ(カフ)は英語の咳”cough”(kôf)からきているため、ケンネルコフは犬の咳という意味です。咳をしている子犬が来院したら第一に、ケンネルコフを疑います。
今回は3月くらいから診療件数が増えているケンネルコフについてご紹介します。
【原因】
ケンネルコフは1つの病原体が原因ではなく、複数の細菌性およびウイルス性の病原体が様々な臨床症状を引き起こすことが多いとされます。多くは飛沫感染を起こします。
犬のケンネルコフには以下のような病原体が関与します。
・イヌパラインフルエンザウイルス
・イヌアデノウイルス 1型、2型、
・ボルデテラ(気管支敗血症菌)
・マイコプラズマ
・犬ジステンパーウイルス
・犬ヘルペスウイルス
・犬ニューモウイルス
【症状】
発咳(咳)を中心に食欲不振や下痢、嘔吐などを起こすことが多く、いわゆる日和見感染の発症が多いとされます。この症候群は1歳未満の子犬が99%以上を占めるとされます。
一般的に多頭飼育環境のペットショップやブリーダーなどの環境下で発生し感染することが多いとされます。しかし、家に迎え入れてすぐの時期、特に1週間以内や、ペットホテルに預けて環境が変化したストレスで発症する子犬も多いです。
興奮や気管、喉の圧迫で症状が悪化することが多いとされます。また咳の後嘔吐する仕草が認められ、そのまま嘔吐すると吐物が気管に入って誤嚥性肺炎を起こすこともあります。その他に発熱、涙、目脂、鼻汁、くしゃみがあることもあります。
【診断】
診断は通常、病歴と身体検査によって行うことができます。
臨床症状は通常、軽度で自然に治まり、約 1 週間後に回復します。
ただし、重度または長期にわたる臨床症状がある犬や病気が発生している状況では、病原を特定する必要があります。
病原体の同定は鼻腔・咽頭(喉)・口腔内のスワブでPCR検査などを行います。
上部気道感染のため胸部x線検査(レントゲン検査)において肺に異常が認められないことも多くありますが、肺炎を併発していないかどうかが診断にとっては大事なポイントになります。
聴診で肺音に異常音がなくても肺炎を併発している可能性が否定しにくい場合はレントゲン撮影を行います。
【治療】
人の風邪と同様に、軽い場合は自然治癒するとされています。
しかし、感染するのは免疫が未熟な子犬のため重篤化することも珍しくありません。
軽い感染でも咳だけが何週間も続くことはあるため咳の治療を継続して行うことがあります。
治療は以下の治療を組み合わせて行います。
- 抗菌薬 ケンネルコフで想定される細菌に対する抗生剤を投与しますが、治療反応が悪い場合は細菌培養検査を行うこともあります。
- 気管支拡張剤
- 鎮咳剤
- ネブライザー (吸入)療法
その他に温度や湿度の調節、安静などの対応が必要になる。
食事がしっかり取れていない場合は支持療法(点滴治療など)も必要になります。
死亡率は低いものの、高い罹患率の病気です。
初めて子犬を迎え入れるときは事前に動物病院に相談して適切なケアをしていただくことをお勧めします。
当院は早朝7時から(日曜・祝日は9時〜)完全予約制で診療を行なっている渋谷区にある動物病院です。
夜間に体調を崩し、朝になっても回復していない場合、朝からお仕事やご用事がある場合など、早朝の診療をお勧めいたします。
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