外耳炎 1

これからの季節、外耳炎になりやすいという子が増えてくる時期です。外耳炎についてご紹介いたします。

外耳炎の分類(PSPP分類)①

 比較的みなさんがご存知の遭遇しやすい耳の疾患といえば、外耳炎です。この外耳炎はさまざまな要因が重なって起こるとされていますが、その要因ごとに分けて外耳炎を考える分類方法を「PSPP分類」と言います。

外耳炎を「PSPP」分類で要因ごとに分類することによって、適切な診断・治療を行うことができます。

 今回は、その「PSPP」分類とはどんな分類なのか、ご紹介していこうと思います。

【PSPP分類】

主因       Primary causes

副因       Secondary causes

憎悪因   Perpetuating factors

素因       Predisposing factors

この主因、副因、憎悪因、素因の頭文字をとって、PSPP分類と呼んでいます。

【主因 Primary causes】

 主因とは、単独で外耳炎を発生させることが可能な要因です。この主因を特定できていないと、外耳炎の再発につながります。

  • アレルギー:アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど
  • 内分泌疾患:甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、性ホルモン失調
  • 微生物:耳ダニ、毛包虫、マダニ、ツツガムシ、皮膚糸状菌など
  • 異物:植物、毛、砂
  • 免疫介在性疾患:落葉状天疱瘡、薬疹、多形紅斑、血管炎など
  • 角化異常:脂漏症、脂腺炎、ビタミンA欠乏症、亜鉛欠乏症
  • その他:若年性蜂窩織炎、コッカーの特発性炎症性外耳炎、猫の好酸球性肉芽腫群、猫の増殖性壊死性外耳炎、耳介軟骨炎

 慢性外耳炎の75%がアトピー性皮膚炎に関与しているという報告や、アトピー性皮膚炎の83%で外耳炎の既往歴があるという報告もあります。
そのため、必ず外耳炎の背景疾患として、この主因で挙げられた疾患(特にアレルギー)を精査することがとても重要になります。

【副因 Secondary causes】

 副因とは、外耳炎が起こった結果二次的に付随する要因ですが、除去可能なものです。

  • 細菌:ブドウ球菌や緑膿菌
  • 酵母:マラセチア、カンジダ
  • 真菌:アスペルギルス
  • 点字薬や洗浄液の薬物反応:アルコール、プロピレングリコール、低pH
  • 過度な洗浄:過度な水分、綿棒などによる物理的刺激

 よく細菌性外耳炎やマラセチア外耳炎と言いますが、これはあくまでも副因です。背景にアレルギーや内分泌疾患などの主因があって、二次的に細菌やマラセチアが増殖しているため、必ず外耳炎ではアレルギーなどの背景疾患を精査することが重要です。

 次回は、残りの憎悪因、素因についてご紹介していきます。

当院は早朝7時から(日曜・祝日は9時〜)完全予約制で診療を行なっている渋谷区の動物病院です。
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この記事を書いた人

獣医皮膚科認定医 門岡友子

この度「めぐり動物病院 元代々木」にて皮膚科専門診療を任されることとなりました。
皮膚疾患は動物病院への来院理由でも常にトップ3に入る疾患です。
また、アレルギーや感染症、免疫介在性疾患、腫瘍など、原因が多岐に渡るのも皮膚疾患の特徴です。
そのため、皮膚疾患の原因を一つ一つ丁寧に紐解き適切な診断を行い、ご家族に寄り添った治療を提案してまいります。
ワンちゃんネコちゃんの皮膚疾患にお困りの方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

経歴
・麻布大学獣医学部 卒業
・Vet Derm Tokyo 皮膚科第1期研修医
・ヤマザキ動物看護専門職短期大学 非常勤講師
・日本小動物ケースベースド情報ネットワーク(JCABIN)皮膚科担当講師