タンパク尿について

尿検査でわかるタンパク尿腎臓病の予後不良因子としても知られており症状がない時から測定が推奨されます。

タンパク尿とはどのような状態なのか。タンパク尿が見つかった時に原因として何が考えられるのかご紹介いたします。

【正常な尿にタンパクはでない】

尿は腎臓でつくられます。腎臓では、血液をもとに濃い尿がつくられ、腎臓の濾過システムで必要なものは身体(血液)に戻り、不要なものはそのまま排泄されるシステムになります。通常、血液の中を流れているタンパクは大きな分子なので濾過されないものになりますが、異常があると濾過されてしまい尿中に多く排泄されるようになります

よく例えられるのは、濾過するための細かい網目が壊れて大きなものも流れ出てしまうという状況で、その大きなものの一つがタンパクです。


【タンパク尿の検査】

尿検査の際にペーパー試験紙でおおよその蛋白量を確認します。+、++、+++、++++といったようにタンパク定性試験を行います。実際の量はUPC(タンパク尿クレアチニン 比)の数値でタンパクを定量化して確認します。

タンパクを正確に測定(定量)する時は自然に排泄した尿ではなく、病院で膀胱から尿を採取する必要があります。
また、結石や結晶および感染があるとタンパクが高値となるため、原因疾患を治療後に再度タンパクの性格な測定が必要です。

尿検査のペーパー試験紙に加えて、精密にUPCを測定した方が良い時は、尿が薄く(尿比重<1.030)でタンパク1+以上、慢性腎不全の時です。

健康診断では中齢から高齢犬(4-8歳以上)の20%がUPCが増加していたとされ、健康診断で早期に見つけるべき数値と考えます。

【正常なUPC】  

  • イヌ、ネコともに <0.2
  • イヌの蛋白尿 >0.5
  • ネコの蛋白尿 >0.4

【タンパク尿の原因】

尿のタンパク陽性であってもイコール腎臓病ではありません。

腎臓に原因がある場合

  • 生理的:発熱、激しい運動
  • 病的:原発性腎疾患、全身性疾患(2次性)

    腎性のタンパク尿で全身性疾患が原因になるもの
    • 症状があり他の検査所見でも区別がつくことが多いもの:過粘稠症候群(赤血球増加、高グロブリン血症)、腫瘍(リンパ腫、肥満細胞種)、自己免疫疾患、慢性炎症、薬剤(ステロイド、サルファ剤など)
    • 無症状でタンパク尿以外の所見がないケースもあるもの:高血圧・感染症(ライム病、アナプラズマ、レプトスピラ、フィラリア症など)・内分泌疾患(クッシング、糖尿病、高脂血症、先端巨大症、甲状腺機能亢進症)

腎臓以外に原因がある場合
 腎前性:血漿の異常なタンパクの増加

  • 多発性骨髄腫(ベンス・ジョーンズタンパク尿):腫瘍性疾患です。
  • 横紋筋融解症(ミオグロビン尿症):筋肉が急激に障害された時に高くなります。
  • 血管内溶血(ヘモグロビン尿症):赤血球が急激に壊された時に高くなります。免疫疾患など。
  • その他、薬物反応や急性膵炎など

 腎後性:腎臓より下部の尿路経路の異常 

  • 尿路感染
  • 尿路結石症
  • 特発性膀胱炎(猫の下部尿路疾患)
  • 泌尿器自体にできる腫瘍(移行上皮癌)
  • 膣炎/前立腺炎


イヌの腎臓病のほとんどが糸球体性とされ、タンパク尿は症状が出る前、かつ腎数値があがる前の初期に出てくるとされます。犬の慢性腎不全は進行が早いとされているため、健康診断でタンパク尿が出ていた場合は注意が必要です。またネコの腎臓病は間質性であるため初期に蛋白尿がある子は少ないものの、進行した慢性腎臓病の2割ほどはタンパク尿になるとされます。高血圧が原因でも尿タンパクが出るため注意が必要です。

【タンパク尿のリスク】

蛋白尿を治療しないとどうなるのか

  • 蛋白尿は腎臓病の予後不良因子とされています。(タンパク自体が腎臓病の進行因子となる。炎症の進行、線維化を進行)
  • 血栓症のリスク:血栓ができやすくなります。
  • 尿中タンパクが顕著で持続的な場合は血液中(血漿)のタンパクが低下し、腹水が出てくる。

タンパク尿の治療についてご紹介いたします。

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この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。