外科手術のなかで比較的一般的に行われる手術の一つです。
どのような時に脾臓を摘出せざるを得ないのかご紹介します。
適応
脾臓摘出術は脾臓自体全てを取り除く外科手術です。
脾臓摘出術の目的は主に脾臓の破裂や出血を予防・治療することです。
脾臓はなくても正常に生きられますが、脾臓にも、もちろん役割りがあります。
【脾臓の役割】免疫の監視役、造血などの役割で重要な臓器です。
- 血液の貯蔵供給 脾臓では大量の赤血球がその血管内に貯蔵され、身体を循環している血液量の10-20%に相当する量が貯蔵され、血小板は全体の30%が貯蔵されているとされます。体で急性の出血がおこると、脾臓の筋肉が収縮し、新鮮な血液が放出され血圧を保とうと働きます。
- 古くなった、損傷した、または異常な血球を濾過 古い赤血球は、若い赤血球よりも弱く、脾臓の血管の中を移動する際、多くの古い赤血球が壊れます。そこで赤血球から鉄が出て脾臓は鉄を再利用します。したがって、脾臓は古い赤血球を体循環から除去し、重要な栄養素を再利用するように働いています。
- 寄生虫などの感染血球の治療 脾臓は血液中の感染した赤血球から感染を取り除きます。例えば、赤血球に寄生する内部寄生虫の体への拡散を防ぎます。これは良いことのように思えますが、場合によっては貧血を引き起こす可能性があり、過剰な防御反応になるケースがあります。
重篤な場合には、脾臓を摘出する必要がある場合もあります。 - 感染症への防御 脾臓はリンパ節のように機能します。リンパ節は免疫系、特に感染と戦う抗体をつくるリンパ球の活動のセンター的な役割をしており、リンパ球は感染症と戦うために脾臓の血管を通過します。
【脾臓摘出術の適応】
どのような状況で脾臓を摘出することがあるでしょうか
- 脾臓破裂 重度の腹部損傷、悪性腫瘍、嚢胞または良性腫瘍によって脾臓が破裂すると多量に血液が流出し腹腔内に失血が起こり、場合によっては死に至ることもあります。お腹の中の出血は見た目ではわかりませんが、口腔内の粘膜色がうすくなったり、元気がなくなることがあります。ひどい場合は意識がなくなる失神をおこすこともあります。
- 脾臓の腫瘍、嚢胞、および癌 元気であっても偶発的にお腹のエコー検査(超音波検査)で腫瘍、嚢胞、または腫瘤が見つかる場合があります。その見つかったしこり(できもの)が何であるのか病理診断をするため、あるいは破裂のリスクを避けるため脾臓摘出が推奨されます。手術の前に腫瘤の正体をみる検査として針生検を行うことがあります。
- 脾臓腫瘍は一般に良性腫瘍(血腫)、または血管肉腫、肥満細胞腫瘍、リンパ腫などの悪性腫瘍が多く発見されます。犬の場合、脾臓の腫瘤のほとんどは血腫または血管肉腫のいずれかですが、猫の場合は通常、肥満細胞腫瘍またはリンパ腫が多く認められます。猫の場合、肥満細胞腫は脾臓のみに発現していることもあり、脾臓を摘出することで長期の寛解(腫瘍がない状態)が得られ完治することもあります。また、脾臓腫瘍が良性の場合、脾臓を摘出すれば問題がなくなります。
- 脾臓の捻転 脾臓捻転、つまり脾臓のねじれは、単独で発生することもあれば、胃拡張捻転症候群(GDV)に伴って発生することもあります。それは突然起こることもあれば、時間をかけてゆっくりとねじれることもあります。まれではありますが、発生する場合は、ジャーマン シェパード、スタンダード プードル、グレートデーンなどの胸の深い大型犬によく見られるため、遺伝的関係があるともされています。
- 胃拡張と胃捻転: 胃が何らかの理由でガスで膨らみ、胃の軸がねじれ血流が遮断されます。これは緊急手術が必要な命に関わる状態です。脾臓は胃のすぐ下にあり、胃がねじれると、脾臓も一緒にねじれることがよくあります。また、最近の研究では 、脾臓摘出術を受けた症例では GDV のリスクが増加することが示されました。犬種によって脾臓を摘出した場合は、いっしょに予防的胃と腹壁の固定を行い胃が捻転しないように予防しておくことがあります。
- 脾臓の感染症:日本ではレアですが、脾臓自体の感染が起こることがあり、脾臓摘出術の適応となることがあります。
次回は手術自体や合併症についてお知らせいたします。
当院は早朝7時から(日曜・祝日は9時〜)完全予約制で診療を行なっています。
夜間に体調を崩し、朝になっても回復していない場合、朝からお仕事やご用事がある場合など、早朝の診療をお勧めいたします。
セカンドオピニオンにも対応しております。
WEB予約でご予約枠がない場合、緊急時はすぐにお電話でお問い合わせください