猫風邪

冬に入ってから2月になってもまだ流行っている猫風邪についてご紹介いたします。

猫風邪は猫のウイルス性呼吸器感染症の総称です。
人の風邪のようにくしゃみや鼻水が出ます。

主に「猫伝染性鼻気管炎」(ヘルペスウイルスが原因)のものと「猫カリシウイルス感染症」が原因となる感染症です。
その他にクラミジアマイコプラズマなどの細菌感染(マイコプラズマは厳密には他の細菌と少し異なる)を併発していることもあります。

主要なウイルスであるヘルペスウイルスについてご紹介します。

猫ウイルス性鼻気管炎:生涯身体に潜んでしまう可能性があります・・・

猫の猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)とは?

FVR は猫に感染する伝染性の高い感染症であり、上気道感染症の主な原因となっています。FVR は猫ヘルペス ウイルス 1 型 (FHV-1) の感染によって引き起こされ、他の種には感染しません。すなわち、猫風邪はヒトやイヌに感染しません。ちなみにヒトの風邪も猫には感染しません。
FVRに感染した猫は、FHV-1に生涯感染し続けることになり、ストレスや疲れでウイルス症状が再燃する可能性があります。さらに、FVR にかかった猫は、呼吸器疾患、長期にわたる眼の症状や、二次細菌感染症のリスクがあり、重篤な場合には肺炎を引き起こす可能性があります。

感染経路


FHV-1 ウイルスは、感染した猫の唾液目やにまたは鼻汁との直接接触を通じて他の猫にうつります。

  • 感染した猫との直接接触
  • 感染した猫と餌入れ、水入れ、猫砂トレイを共有
  • 感染した猫のくしゃみの飛沫を吸い込む 
  • 寝具や手入れの道具など、汚染された環境や物体との接触

猫の猫ウイルス性鼻気管炎の症状

FVR の症状はまさに風邪の症状です。重症度は感染した猫の免疫系の強さに左右されます。
若い猫、子猫、その他の慢性疾患のある猫では、FVR リスクが高くなります。FVR の症状は、最初の感染後 2 日から 5 日の間に発生し、1 か月間持続する場合があります

  • 突然のくしゃみ発作 
  • 鼻詰まり
  • 過剰なまばたきや目を細める、目を閉じる
  • 透明、黄色、または緑色の鼻汁と目やに
  • 目の周りや目の中の赤み
  • 嗅覚がない(匂いがわからない)
  • 発熱
  • 元気がない
  • 食欲不振、食欲低下
  • リンパ節の腫れ
  • 声の変化、声がでない

猫の猫ウイルス性鼻気管炎の診断と治療 

症状がある場合はもちろん病院に相談していただくことが多いと思いますが、成猫は感染してもわかりやすい症状を出さない場合があります。一見元気そうな猫さんが、他の子ウイルスを感染させてしまうかもしれません。ヒトが感染した子猫または成猫と接触した場合は感染を広める可能性が高く注意が必要です。

診断は、猫の病歴、臨床症状、および潜在的な FVR 曝露歴に基づいて行われます。感染した猫の目、鼻、喉から採取したサンプルから PCR 検査により、確定診断が得られます。その他の検査では、二次感染または関連疾患をチェックする、あるいは臓器機能を評価するための血液検査を行う場合もあります。また、FVR(ヘルペスウイルス)は結膜炎を起こし場合によっては重篤な角膜潰瘍を起こすこともあります。症状によっては角膜潰瘍やドライアイをチェックするための眼科検査も行う必要があります。 

FVR 感染症には特効薬というものはなく、人と同様風邪の対症療法になります。症状が軽い成猫であれば治療を受けなくても回復する場合がありますが、重度の症状がある子猫や成猫は入院治療が必要になる場合があります。
治療法には次のようなものがあります。

  • 発熱や食欲低下、鼻汁などに対し脱水症状を防ぐための点滴
  • 細菌の二次感染を防ぐための抗生物質
  • 局所点眼薬
  • 抗ウイルス薬 ヘルペスにはファムビルという抗ウイルス薬の効果がわかっています。
  • プロバイオティクス
  • 免疫システムをサポートするL-リジンサプリメント
  • 環境加湿または噴霧
  • 食事療法   

猫の猫ウイルス性鼻気管炎の予防

子猫の時のワクチン接種は、FVR 感染症に対する最善の予防法です。
以前にFHV-1に感染したことのある猫は、感染の再燃を防ぐために、より頻繁なワクチンの追加接種が推奨されます。ワクチン接種を受けた猫でも FHV-1 に感染する可能性はあるものの、もしかかっても重症度が軽減される可能性があり、感染しても症状が出ない子もいます。
幼少期はウイルスに対するワクチン接種のプロトコール(接種計画)が完全に完了するまでは、猫を外に出したり、他の猫や猫がいるお家やヒトには近寄らせない方がよいです。

また、FHV-1 感染症は一生体に潜み、ストレスなどで再燃する可能性があるので、猫をストレスの多い状況(疲れ、寒さ、移動など)にさらさないようにするのが大切です。

もし、家の中で感染が広がりそうな時は他のウイルス同様に消毒が効果的です。感染リスクがある鼻水や涙および唾液のような分泌物は乾燥すると中のウイルスはすぐに死滅します。最も効果的な家庭用洗剤は、薄めた漂白剤です。
感染した猫の寝具を熱湯と通常の洗剤で洗うのも効果的です。



以下のような状況でヘルペスウイルスの感染のリスクが高くなります。

  • 新しい猫(子猫・成猫)をお家に向かい入れる
  • 病院やホテルに預けることが多い
  • お家が多頭飼育
  • 他の猫と接触することがある(その手や服でお家の子に接触する)。

当院は早朝7時から(日曜祝日は9時〜)完全予約制で診療を行なっています。
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この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。