デンタルケアで普段からお口の中を観察できている方は、もしできものが出来てしまっても早期に気が付けそうですが、デンタルケアが苦手なおうちの子、お口を見れない子の場合にはお口の変化に気が付きずらく発見が遅れてしまう可能性があります。
特に高齢の子では注意が必要です。
口にできものができた時、どのようなことが考えられるでしょうか。
普段気を付ける点も共有させていただきます。
口腔腫瘍は猫と犬の両方に発生し、犬ではすべての悪性腫瘍のうちの6−7%、猫では3%程度とされており過去のデータより増えてきているとされます。オーナー様が早期に発見、あるいは動物病院に健康診断で来院する頻度が以前より増えている、などで診断される機会が増えたことや、犬や猫の寿命が伸びていることに関連しているかもしれません。
また、犬や猫で口に何かできもの(腫瘤)ができた時に組織検査で悪性だったという確率は5-6割程度です。
猫よりも犬の方が一般的とされ、オスはメスよりも2.4倍発症リスクが高いというデータがあります。
猫では口にできものができた時にそれを検査すると炎症性(51%)が最も多く、扁平上皮癌(37%)が次に多い結果でした。
犬で最も一般的な口のできものは悪性腫瘍で (37%) で、続いて良性腫瘍 (34%)、炎症性病変 (28%) でした。
悪性腫瘍の中で多いものを順位にすると
犬の悪性口腔腫瘍は
1.悪性黒色腫 2.扁平上皮癌 3.繊維肉腫
猫の悪性口腔腫瘍は
1.扁平上皮癌 2.繊維肉腫
【症状】
口腔腫瘍の初期には
- よだれが多い
- 顔の一部が腫れている
- 鼻から出血(鼻血)
- 体重減少
- 口臭
- 歯肉炎
- なんとなく眼が前に出ているように感じる
これらの症状が出て初めて気が付くことが多く、そこから感染や炎症を起こしていきます。
また、見え辛い場所のため気がつかずに徐々に悪化していき、徐々に食べにくくなり、最終的には痛みで食欲がなくなる状態となります。
【腫瘍の種類】
上記であげた腫瘍について個別で紹介します
扁平上皮癌
犬では犬歯よりも前方側(鼻側)、猫では舌の付着部(根本)に多く発生するとされます。
過去の報告において、猫で扁平上皮癌を発症するリスクとして、以下のものが挙げあられていました。
(因果関係ははっきりとわかっていません)
・ノミ予防の首輪の使用
・缶詰食品全般、特にマグロの缶詰
・タバコの煙(飼い主様が喫煙者)
扁平上皮癌は骨に浸潤(腫瘍の広がり)し、猫では重度でその浸潤が広範囲であることが多いです。さらに、リンパ節と肺への転移が約30%で報告されています。
局所制御。すなわち早期の手術で摘出することが鍵になります。
悪性黒色腫
犬で一番多い口腔腫瘍で猫では稀です。
よく見られる犬種として、トイ・プードルダックスフンドやコッカースパニエルが挙げられます。半分以上は口の中でも歯肉に多く発生し、黒色で表面は壊死や潰瘍があることが多いです。
高齢で発生しやすいとされています。
悪性度の高い腫瘍として知られており、その成長速度は早く犬の約80%でリンパ節や肺へと転移します。
繊維肉腫
ゴールデンやラブラドールレトリバーのような大型犬の上顎(上あご)に良くみられます。
発症の平均年齢は8歳前後で、オスの発生が多いです。
周りの歯肉や骨への浸潤(広がり)がかなり強いですが、肺やリンパ節への転移は低い腫瘍になります。
口腔内腫瘍は骨にも腫瘍が入るものから、骨には浸潤しないものまでさまざまです。
初期であれば手術で切除し腫瘍を制御できることも多いため、早期発見が最も大切になります。
口腔内は普段から見えるところではないため、定期的にチェックしてあげましょう。口を触られるのがもともと慣れていない子は病院でチェックしてもらいましょう。
よだれや口臭は歯周病の可能性も考えられますが口腔内をしっかり確認する必要があります。
気になることがあればご相談くださいね。
引用:
Cray M, et al. J Vet Sci. 2020 Sep
Wingo K. J Vet Dent. 2018 Mar