犬も種々の原因で便秘になりますが、一般的に犬は猫とは別の原因での便秘があります。
猫で多いメガコロン(巨大結腸症)は猫の便秘の回でご紹介しましたが、犬ではめったに起こりませんが、犬も慢性的に便秘が起こるとメガコロンに可能性があります。
便秘の症状や犬で多い原因についてご紹介します。
便秘の症状
便は通常1日1回以上出ます。便秘とは便意があるのに便が出ないことなので、排便をしようとしている症状が確認できます。初期は便をする態勢のまま時間がかかってやっと便が出るような様子で、ひどくなると、鳴きながら排便姿勢をとります。
以下を確認してください
- 犬が力んで排泄しようとしているのを見かけたら、犬が排尿はできているのか確認してください。排尿で力むのと、排便のために力むのを間違えやすい場合があります。尿ができないことはより緊急事態であり一刻を争う場合があるのですぐに病院を受診しましょう。
- 次に、犬が便を出したのが確認できた場合は、便の硬さをチェックして下痢の兆候があるかどうかを確認します。大腸性下痢はしぶりの症状が便秘と間違われやすいです。便秘ではなくても下痢、または粘液や血液を伴う少量の液体が見られた場合は、獣医師に連絡して指示を仰いでください。
- 犬のお尻を見て確認してください。
- 赤み、腫れ、および/または傷(膿瘍など)がないか。
- 肛門に糞便がついていないか。ついていたらまずぬるま湯でよくふやかして取ってあげてください。可能であればブラッシングすることで、次に便秘や下痢のさらなる兆候がないか観察しやすくなります。
犬の便秘の原因
犬の便秘の一番の原因は、消化しにくいものを食べることで結腸に詰まり、糞便の進行を妨げることです。便秘のその他の理由には次のようなものがあります。
食べ物
- 消化できないものの誤食(例:布、砕かれた骨、ゴミなど)
- 食生活の変更
- 低繊維食
家庭や日常生活の変化
- 下宿、旅行、家での新しい人やペット、家族の新しいスケジュールによるストレス
- 運動量が減っている(例:最近の入院、可動性の変化)
排便を妨げる痛み 痛みがあると排便のいきみができなくなり便を我慢するようになります。
- 関節炎
- 肛門腺膿瘍
- 背中神経の痛み
神経学的状態 便を出すために必要な神経に異常をきたした場合
- 神経損傷:事故などで神経を傷害された場合に排泄がし辛くなります。
- 腫瘍:神経にできる腫瘍や神経を圧迫する腫瘍ができた場合排便がしにくくなります。
- 椎間板疾患:背部を通る脊髄神経に以上がでて排便がしにくくなります。
構造的障害物 直腸に物理的に便が通り辛くなる構造物ができる
- 前立腺肥大(例、ホルモン性、炎症、腫瘍):もっとも多い原因は去勢をしないことによるホルモン性の肥大です。5 歳以上の未去勢の犬の約 80% (Sirinarumitr et al., 2001)、および 9 歳以上の無傷の雄犬の > 95% (Gobello and Corrada, 2002a) で起こるとされます。そのうち半分程度、おそらく初期は無症状ですが肥大が顕著になると排尿や排便や神経に障害が出る場合があります。
- 過去の骨盤骨折
- 腹部リンパ節の肥大:お腹の中にある外から見えないリンパ節が大きくなり直腸を圧迫して便がでずらくなることがあります。
- 直腸または肛門の腫瘍
全身疾患
- 甲状腺機能低下症:ホルモン疾患です。臓器の機能がおちますが、腸を蠕動させるホルモンなので、腸の動きが落ちます。
- 慢性腎臓病:主な原因は腎臓病による脱水によって便が硬くなりで辛くなります。
- カルシウムと電解質の異常:カルシウムや電解質の中のK低下で腸の動きが悪くなるとされます。
薬 多くはありませんが、以下のような薬を使っている時は可能性として挙げられます。
- オピオイド:主に痛み止めでつかわれる薬です。
- 抗ヒスタミン薬
- 利尿薬:脱水による便秘になります。
- スクラルファート(潰瘍用)
診断
直腸の触診などの身体検査を行います。
場合によっては異物の摂取、過去の骨盤骨折、前立腺肥大、会陰ヘルニアなどの考えられる原因を特定するのにも役立ちます。腹部の X 線写真 (X 線) は、診断と重症度を確認できます。
特に便秘が繰り返す場合は以下の検査を行います。
- 脱水症状、感染症や炎症、甲状腺機能低下症、電解質異常を検出するための血液検査
- 尿路および/または前立腺の感染症または炎症を検出するための尿検査
- 結腸内および結腸周囲の腫瘤および狭窄を調査するための腹部超音波検査(場合により結腸内視鏡検査)
- 神経的異常や構造的異常が疑われる場合は MRIを実施することがあります
猫と違って特発性の便秘(原因不明)の便秘が少なく、腫瘍や前立腺肥大などが心配されます。
もし、構造上の異常や便秘を引き起こす脱水を起こす病気がなければ、食物繊維が多めのフードへの変更や内科療法が適応になります。運動を増やせる状況なら運動を増やします。
1日1回異常の排便がない場合、まだ軽い症状のうちに動物病院に相談しましょう。
お困りのことがあればご相談くださいね。