猫の下部尿路疾患の一つである膀胱炎。
血尿、頻尿、排尿後にしぶり、排尿困難、尿をトイレ以外でしてしまうなどの症状がでます。
実は冬になりやすいと言われており、2010年保険会社のアニコムの集計(参照アニコム家庭どうぶつコラムVol.11より)では”膀胱炎”での保険申請が6〜8月に少なく12月に最多となり、寒いことと因果関係があると記載がありました。
“12月に膀胱炎になりやすい”ことが、そのまま”寒いから膀胱炎になる”と言い切れるのかわかりませんが、日本では12月に膀胱炎が多いというのは裏付けがありそうです。
今一度、なぜ”膀胱炎”が12月(冬)になりやすいとされるのか
どんな予防ができるのか考察してみました
猫の膀胱炎(下部尿路疾患)は過去にご紹介しておりますが、最も多い原因が特発性膀胱炎です。
世界各国でこの原因が50-60%後半の割合とされます。その他は、細菌性膀胱炎、尿路結石、解剖学的異常、問題行動、神経疾患となります。
特発性膀胱炎の原因ははっきりしないことが多いですが、環境・食事・ストレスなど様々な誘因が言われています。
危険因子(特発性膀胱炎になったたくさんの子で調べられました)
- 雄:雌より尿道が細いことがリスクになるとされています。去勢手術をした雄の方がさらに尿道が細いので去勢した雄が最もリスクが高いとされます。
- 純血種、長毛腫、中年齢(ある報告では1歳以下より2歳から7歳の猫がリスクが高いとあり)
- トイレの数:猫の数とトイレの数には相関関係があり、多い方がリスクが低いとされます。
- ドライフード:水分摂取の量に関係しているとされています。
- 屋内にいる猫:活動性や動きの低さが関係していると言われています。(外に出した方が良いという解釈は他のリスクがでるのでしないでください)
- 他の動物との不仲
- その他 引越しや食事のお皿の変化や様々な環境変化
一般的に冬はリスク因子には挙げられていませんでした。
過去の世界の報告で本当に冬に膀胱炎が多いのか、冬じゃなくても季節性があるのか、さらに世界の報告を調べてみましたが、ほとんどの報告は季節による発生率の違いはないとしていました。
なかには、アメリカの報告で地域特有の季節性があり、春に多い地域があるなどの報告はありました。
また、ニュージーランドの報告では症状が出た前月の降水量が多いことが判明しました。活動量が減るからでしょうか。雨がストレスになるのでしょうか。そこには言及はありませんでした。
なぜ、日本では冬に膀胱炎が多いとされているかに戻ると、一説には
冬は寒くなるのでトイレの位置が寒い場所にある場合にトイレに行くのを我慢するようになり膀胱炎になる。
寒さから動かずに活動量が減る、飲水も減るとされ、これらが特発性膀胱炎を起こしやすくしているのではないか。
やはり、寒さがいろいろな危険因子を誘発していそうです。
本当に寒さが関係しているか検討するには、温度と病気の関係を世界中で見る必要がありそうですが、特発性膀胱炎はパンドラの箱といわれるくらい誘因が多いので今わかっていることから予防するのが一番近道になりそうです。
冬の猫の膀胱炎を予防しましょう
- 冬は部屋を十分に暖かくする。トイレの位置を寒くないところに設置する(数を増やす)
- しっかり水を飲める環境にする。ウェットフードも活用する。
- ストレスがありそうな場合はストレス軽減しておく(引越し、旅行、ご家族の出入り、同居動物の出入りなど)。ストレス軽減のための各種サプリメントがあります。予防で使うと効果があります。
- 各社でストレスを軽減する膀胱炎用の処方食があります。
特に繰り返す子は検討してください。
日本の冬は寒い、日本の猫たちは冬に膀胱炎になりやすい。
ということで寒い冬をしっかり乗り切りましょう。
なお、
本当に特発性膀胱炎なのか、結石や細菌はいないのか?
腫瘍ができていないか?
構造上の異常はないか
検査で診断することが必須になります。
参照文献:特発性膀胱炎の最新レビュー:Chengxi He et al.Front Vet Sci. 2022.9