治療に反応しない持続的な下痢を慢性下痢といいます。
以前”下痢”の回でも全体的にお伝えしましたが、今回は慢性下痢にフォーカスを当ててご紹介します。
慢性とは3週間程度続く下痢を指します。通常は一般的な初期治療を受けていることがほとんどです。
慢性下痢(3週間以上下痢が続く)
症状
回数が多い下痢もの、元気や食欲などのほかの症状はないもの。体重減少があるもの。嘔吐を伴うものと様々です。
原因
- 炎症性 7割 :
- 食事反応性 6割
- 食事不耐症:体の免疫は関係なく一定の量になると体が受け付けなくなり下痢をします。
- 食物アレルギー 体の免疫反応により下痢をします。
- 特発性(IBD) 2割:原因なく腸に炎症細胞(リンパ球や好酸球)が集まり持続的に炎症を起こす病気です
- 1割 抗生物質反応性:抗生剤に反応をする下痢。止めると再発することがあります。(現在こちらは重要視されていない)
- 食事反応性 6割
- 感染性 1割強
- 病原体は寄生虫、ウイルス、細菌などがあります
- 腫瘍性 0.4割:腸の腫瘍ではリンパ腫が最多。IBDとの鑑別が重要になります。
- 1割は腸以外の病気
- 膵外分泌疾患(EPI)(6%):膵臓からでる消化酵素が減る病気。脂肪の消化ができなくなります。半数の子は便が白く、栄養が吸収できずに痩せていき、いつもお腹が空いていることが多いとされます。
- 内分泌疾患(アジソン等)(2%):アジソンはコルチゾールが出なくなり、腸の絨毛が短縮して栄養が吸収できなくなります。
- まれだが、肝臓、腎臓、心臓の疾患
過去の報告でも、治癒に反応性に乏しいとされたのは→特発性や腫瘍性のものになります。
慢性下痢の87%の犬が治癒しましたが、13%は死亡あるいは治療に反応しなかったという報告でした。
治療反応に影響すると言われているのは以下の項目で、これらは血液検査で確認できます。
- 貧血
- 低アルブミン血症(血清アルブミン < 2.0 g/dL)
アルブミンはただ下痢をするだけでも低下するので解釈に注意が必要です。 - 重度の低コバラミン血症(血清コバラミン濃度 < 200 pg/mL)がある時。
コバラミンはビタミンB12の補充が経口的にでき、補充により予後が改善した報告があり、測定する意義はあります。
診断は
血液検査、画像検査などの組み合わせにより診断し、時には薬や食事を診断的に与えてみてその治療反応を見ることになります。IBDや消化器型リンパ腫の診断には組織検査が必要となります。
全ての原因が一つの検査で確定されるわけではないので、場合によっては少しずつ消去していく必要があります。
一気にすべの検査をすると診断まで早くなりますが、年齢や犬種からも優先すべき検査や治療が違うので、相談しながら実施するのがお勧めです。
とはいえ、体重減少がある場合は早めに診断・治療が必要になります。
慢性下痢でお困りの方は一度ご相談くださいね。
次回は治療について触れたいと思います。
参考文献 :M Volkmann. et al JVIM 2017 Jul;31(4):1043-1055.