先天性心疾患について

“先天性”とは生まれつき存在することです。

犬も猫も人と同様に多くの先天性の病気があり、症状もなく元気にみえても病気が存在することがあります。
ただ、進行するタイプの心疾患はすぐに命に関わてしまうため、早期治療により根治することが大切です。
また、遊びや運動で少し疲れやすい、咳がでる、などの症状が出て検査をして発見されることもあります。

先天性心疾患はいくつかの種類に分けられます。
種類ごとに列挙すると

  1. 短絡性疾患:心臓の壁に穴が開いている、異常な血管が存在している
    例:心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存症
  2. 狭窄性疾患:心臓の内部や血管が狭くなっている、異常な隔壁がある
    例:肺動脈弁狭窄、大動脈弁狭窄、右室二腔症、右側三心房心、左側三心房心
  3. 弁の異常:心臓の中の弁が開きずらい、しっかり形成されていない
    例:僧帽弁異形成、三尖弁異形成、僧帽弁狭窄症
  4. 位置異常:血管の位置に異常があるタイプ
    例:ファロー四徴症(大動脈騎乗以外は1の心室中隔欠損、2の肺動脈狭窄と右室肥大を伴う)

上記の疾患はそれぞれが単独で存在、あるいは併発していることもあり併発している場合の方が重傷になることが多いです。

【診断・検査】

身体検査で異常がないことも多いものの、たいていはパピー(子犬)やキティー(子猫)の検診で心雑音が確認され発見につながります。雑音が通常の心疾患で聴取される場所と違った位置で聴こえることも多く一度の聴診でわからないことも多いのです。逆に聴こえる位置により心疾患の種類を予測できることもあります。

先天性心疾患による心雑音は生理的な心雑音(生理的なものもあり)より雑音の強度が強いことが多いとされています。雑音の音が強いことが直ぐさま重症度に関連しないこともあります。

診断は心エコー検査(心臓超音波検査)で行います。

その他にX線検査(レントゲン検査)、血液検査、心電図検査、血圧検査で併発疾患やその心疾患の重症度を確認します。

【治療】


そもそも治療が必要なものなのか。
病気の種類によっては定期検査は必要なものの、治療をしなくても健康な子と同様に過ごせる疾患もあります。

また逆に早期に治療をしなければ命に関わる疾患もあります。

診断時にその見極めが可能になります。

治療が推奨される場合は内科療法、カテーテル治療、外科治療などの選択肢が一般的です。
一部の病気はカテーテルや外科治療で根治が可能ですが、悪化するとその治療が不適応になり、繰り返しになりますが、早期診断で治る確率が高くなります。

心雑音あるけど確定診断に至ってない。
すごく遊ぶけど疲れやすいなどの症状に気がつかれた場合。
若くても病気が隠れていることがあります。

気になる方はご相談くださいね。

この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。