自己免疫疾患 

自己免疫疾患とは、もともと体に備わっている外部から入る異物を排除する免疫が、正常な自分の細胞や組織を排除しようと過剰に反応してしまう病気のことで、たくさんの種類の病気があります。

代表的なものを簡単にご紹介し、普段おうちの子のどのようなところ注意してみていただければいいかもお伝えします。


免疫介在性溶血性貧血(IMHA):

免疫系が赤血球を攻撃することで赤血球が壊され貧血になります。
犬で比較的多く遭遇し、猫は少ないですが発症します。
IMHA は、基礎疾患によって引き起こされる可能性があり、その場合は二次性と考えられ、原因が見つからない場合は一次性 (特発性) となります。二次性の場合はIMHAの原因となる疾患を治療すると、赤血球破壊が軽減または停止する可能性があり、長期の免疫抑制治療をする必要がなくなるので見分けることが大切です。原因となる疾患には感染症、がん、薬剤、炎症などがあるとされています。

免疫介在性血小板減少症 (ITP):

ITP では、免疫系が血小板を攻撃します。血小板は、血液を凝固させる機能があり、血小板が少ないと出血のリスクが高まります。皮膚や歯茎に小さな赤い斑点である点状出血が発生して気がつくことがあります。また、IMHA同様に基礎疾患が引き金になることがあるため、その場合はその疾患の治療が優先になります。

全身性エリテマトーデス (SLE):

SLE は、さまざまな臓器に影響を与える可能性がある複雑な自己免疫疾患です。症状には、無気力、食欲不振、跛行、皮膚の炎症、脱毛、潰瘍、発熱、筋肉痛、神経系の問題など様々です。SLEを発症する可能性が高い犬種は、コリー、ジャーマン・シェパード、シェットランド・シープドッグなどの中型犬から大型犬である傾向があります。どこの臓器に発症したかにより予後や治療が異なります。

免疫介在性多発生関節炎:

免疫系が関節を攻撃しておこる自己免疫疾患です。びらん性と非びらん性があり、びらん性はレントゲンで骨が溶けたようにみえる所見があり、関節リウマチとも言われるものです。非びらん性は骨に明らかな変化はありません。どちらも痛みは出ますが、びらん性は骨が溶けてしまうので痛みが強く治療をしたとしても溶けた骨は戻りませんので、より早期発見と早期治療が重要です。関節に罹患するのですが、食欲がなくなる、元気がなくなるなどの症状のみで熱があることで他の病気と間違われることもあります。

自己免疫性皮膚疾患:

天疱瘡や円板状エリテマトーデスなど、免疫系が皮膚を攻撃してしまう自己免疫疾患が多数あります。症状としては、皮膚の水疱、潰瘍、脱毛などで気がつかれて病院に受診されます。以前鼻に症状が出た子は、鼻の色素が白くなって痂皮状のものが出てきて気がつかれました。

これらの免疫疾患は一部ですが、いずれも診断が遅れると命に関わることがあります。はじめに起こる異変は決して特別な症状ではありません。

お家の子に以下のような症状はないでしょうか。

  • 最近なんとなく疲れやすい?
  • 口や耳を触ると何か熱を持っているような様子はないですか?
  • 関節に腫れや動きにくい様子、あるいは足をあげたり引きずる様子はありませんか?
  • 皮膚に病変、脱毛、発疹などの異常はありませんか?痒みはないことが多いです。
  • 明らかな原因なく出血したり(鼻血や眼の出血などもあります)、あざ(紫斑)ができたりしていませんか?
  • 食欲はムラがあったり落ちたりしていませんか?
  • 歯茎の色は薄い赤から薄いピンクが正解ですが、白っぽくないでしょうか。黄色くないでしょうか?あるいはオレンジにはみえないですか? 

    他の病気でも起こりうるような症状もあり区別がつきにくいですが、血小板減少症は皮膚のあざ(紫斑)で気がつく方は多いです。
    また、多発生関節炎であっても発熱による食欲低下しか症状が出ない子がいます。

    自己免疫疾患の多くは早期に診断・治療をしないと命に関わることが多いです。

    少しでも気になることは動物病院に相談しましょう。

    また、治療中の方もご心配なことがあれば、セカンドオピニオンも受け付けております。

この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。