猫の皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌症とは、皮膚・毛・爪に感染する真菌(カビ)により引き起こされる皮膚疾患です。に感染する皮膚糸状菌症は、猫同士の触れ合いや接触によって感染します。また、人にも感染ることがあるため、人獣共通感染症として注意が必要な疾患ですので覚えておきましょう。

【症状】

 痒みの程度は様々ですが、よく子猫を新しくお迎えしてしばらくしてから、脱毛カサブタがあることに気づいて、受診につながることが多いです。

左耳の脱毛と痂皮:この子の左耳(画面では向かって右)ように、耳の先端など、猫同士が接触しやすい部分に皮膚症状が出やすいです。鼻の先も同様に症状が出やすいです。

【検査】

ウッド灯検査で感染被毛がないか全身をスクリーニングします。もしアップルグリーンのような蛍光色に光る毛がある場合には、その毛を抜いて顕微鏡で直接確認します。

ウッド灯検査:皮膚糸状菌に感染している被毛はアップルグリーン色に光ります
感染被毛毛が太く膨らみ、粒々としたカビの胞子を確認できます。
真菌培養検査:元々は黄色の培地なのですが、皮膚糸状菌に感染し陽性の場合に培地が赤色に変化し、白い綿毛のようなコロニーが生えます。(上記の写真は結果が陽性になったものです)

【治療】

  • 抗真菌薬の内服

皮膚糸状菌症のメインとなる治療法です。猫の皮膚糸状菌症で最も使われているイトラコナゾールという抗真菌薬は、副作用が少なく子猫でも使いやすいため、第一選択薬として使用されています。

  • 外用療法

皮膚糸状菌症に対する外用療法は、患部の二次感染予防や感染した被毛が環境中へ広がるのを防ぐためにも重要です。また、抗真菌薬の内服と組み合わせることで治療期間の短縮にもつながります。外用療法には、薬用シャンプーや塗り薬があります。

  • 環境清掃

最初にお伝えした通り、皮膚糸状菌症は人獣共通感染症です。そのため、他の動物や人への感染を防ぐために、環境清掃も大切な治療の一つです。とは言っても、たいそうな事をする必要はなく、掃除機やクイックルワイパーで毎日落ちた毛を取り除いたり、こまめな洗濯が推奨されています。

 皮膚糸状菌症だけではなく、猫ちゃんの皮膚に何かトラブルを見つけた場合は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事を書いた人

獣医皮膚科認定医 門岡友子

この度「めぐり動物病院 元代々木」にて皮膚科専門診療を任されることとなりました。
皮膚疾患は動物病院への来院理由でも常にトップ3に入る疾患です。
また、アレルギーや感染症、免疫介在性疾患、腫瘍など、原因が多岐に渡るのも皮膚疾患の特徴です。
そのため、皮膚疾患の原因を一つ一つ丁寧に紐解き適切な診断を行い、ご家族に寄り添った治療を提案してまいります。
ワンちゃんネコちゃんの皮膚疾患にお困りの方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

経歴
・麻布大学獣医学部 卒業
・Vet Derm Tokyo 皮膚科第1期研修医
・ヤマザキ動物看護専門職短期大学 非常勤講師
・日本小動物ケースベースド情報ネットワーク(JCABIN)皮膚科担当講師