僧帽弁閉鎖不全症の合併症

犬で最も多いとされる心臓の病気です。13歳を超えると8割がこの病気に罹患しているとされます。早いと3歳くらいから発症していた子もいましたが一般的に中高齢で発症します。
以前も紹介したこの病気ですが通常は無症状で進行したら咳や肺水腫(左心不全)による呼吸不全が悪化した時に出る症状や所見として知られています。
さらに進行した時には様々な合併症が出てきます。(新たな悪化所見、徴候ともいいます。)
治療で安定していてもこれらの合併症の兆候が出ていないか定期検査をし、その所見が出た場合は適切に診断・治療する必要があります。

一部を例に挙げると

  • 不整脈
  • 肺高血圧症
  • 右心不全
  • 腎不全

が挙げられます。

その中の不整脈心房細動についてご紹介します。

心臓、特に左心房が拡大した時に起こる不整脈です。
この不整脈はいろいろな動物種で確認されており、心臓が大きい、すなわち体が大きい動物でなりやすい不整脈とされています。

例えば、ネズミでは起こらないのですが、馬や人では多い不整脈ということです。これは少し面白いですよね。
よって、猫では発症が少なく、犬では4、5kgより大きい子がなりやすいとされています。(猫でも心筋症という病気で左心房が大きくなってしまった子で経験はあります。)

【症状】

心房細動になると、心臓の部屋が連動して動き血液を体に送りずらく、送れる血液の量が血液の量が3/4(25%減)くらいに減ることによって弊害がでます。
一般的に不整脈で連想されるような失神や虚脱という症状よりは、なんとなく元気がなくなる、食欲が少し落ちるなどのおうちの方がわかりにくい症状ですが、このせいで心臓の周りに体液がたまる心膜液や、腹水が出ることがあります。

【診断】
心電図検査で診断できます。以下のイラストで示すように正常では無い波形がバラバラと出ています。

聴診器で聴診すると身体検査の聴診では心臓の音が一定にドクドクと聞こえず、大小様々な音として聴こえるので、心拍数を正確に数えられません。ただ、この不整脈は心拍数が高い場合は心拍数を下げる薬物治療が推奨され効果が証明されているため、心電図検査で心拍数をしっかり確認するのが大切になります。
不整脈を正常に戻す治療は成功しないとされています。

聴診で心房細動の音を例えると、洗濯機に運動靴を入れて乾燥させた音と言っている専門家がいたとかいないとか。
(海外の循環器専門家が雑談で話していたそうなので乾燥機やドラム式洗濯機かもしれません) 

心臓病は進行性の疾患がほとんどです。
病期によって定期検査で診るポイントが違います
病気があっても美味しく食事をとれる、苦しくなく過ごさせてあげられるが最大の目標で、そのための定期検査になります。

ご心配なことや気になることがあればご相談くださいね。

この記事を書いた人

巡 夏子

大学卒業後、北海道の中核病院で内科や外科診療に携わった後、関東の夜間救急病院で勤務しながら大学病院や2次診療施設で循環器診療を習得。その後、2つの一般病院で診療部長や副院長として診療にあたる。2023年、渋谷区元代々木町に「めぐり動物病院 元代々木」を開院する。