猫の咳で疑う疾患の一つです。
猫の咳は人や犬と少し違うように見えますが、何か変?とオーナーさんは気がついて相談されます。診察中にお話ししていると、くしゃみと間違う方も多い印象です。
咳=喘息ではなく、その他の病気でも咳をする可能性があります。猫は犬と異なり心疾患では咳はみられず、呼吸器疾患で認めます。
喘息に似た症状が出る病気
- 慢性の気管支炎 呼吸器感染症、吸入刺激物、外傷など、過去に生じた障害によって二次的に生じる
- 細菌感染(マイコプラズマ、ボルデテラ)気管支炎 これが上記へ移行することも
- フィラリア関連呼吸疾患 犬で知られる寄生虫ですが、猫では死んだ虫体がアレルギーや血管炎の原因になります
- 肺虫 猫がカタツムリやナメクジを食べたりするとそれに寄生している寄生虫が悪さをし、日本でも報告があります。
- トキソカラ(猫回虫)
喘息はアレルギーに起因すると考えられている猫によくみられる下部気道炎症性疾患で、特徴は猫全体の1−5%、年齢はこの病気の猫たちのちょうど真ん中が4〜5歳とか6歳といったと報告があります。ただ、ほとんどの子がそれより前に症状があるので、もっと若い時から病気を発症している可能性があります。
喘息の病態的な3大特徴は、気道炎症、気道過敏性、気流制限があります。気道の流れの制限は短期だと正常に戻るものもあります。気道の可逆的(元に戻る)収縮が起きるのが特徴です。長期的には、これらの変化は気道のリモデリング(構造が変化して元に戻らない状態)や固定的な気道閉塞につながって戻らなくなってしまいます。
喘息の診断は何が陽性になったから確定診断というものではなく、症状、身体検査、各種検査を組み合わせ、他の病気を除外していくようになります。
喘息疑う症状
- 咳
- 努力呼吸
- 開口呼吸
- 呼吸が早い
- 嘔吐
- 3割くらいでくしゃみをともなった報告がある
身体検査での特徴
- 気管を皮膚の上から軽く触っると咳がでる
- 呼吸の喘鳴音
- 息を吐いた時に腹部が引っ込む(腹部の呼気努力)、呼気時間(吐く時間が)が長い場合も
次回は喘息を疑う場合の検査と所見、治療についてご紹介します
参考文献
Trzil, Julie E. 2020. SAP 50(2): 375–91.
Grotheer, Maike et al. 2020.JFMS 22(7): 649–55.