「最近なんだか歳のせいか、ボーッと焦点が合わない感じで一点を見つめたり、私たちに興味ない感じがします。」
と心臓病の定期検査の日に13歳のポメラニアンのオーナー様が心配そうに教えてくださいました。
13歳なのでまだ早いかなーと思いつつ、認知症がよぎります。
実際に過去の海外の報告で300頭以上の9歳以上の犬を調査し、9歳から11歳の小型犬の認知症は22.7%もいたという報告でした。
他の報告でも11から12歳の犬の認知症は28%、そのうち半分が重度な認知症でした。
海外ではヨークシャーテリアが多く、大型犬より小型犬、雄より雌が多いとされています。日本では柴犬をはじめとする日本犬が圧倒的に多いそうです。加齢とともに増えていきます。
診断基準にもある認知症に特徴的な症状をご紹介します。
DISHAA という評価基準です。以下の英語の言葉の頭文字をとっています。
8歳以降に出てきた、あるいは進行した症状に点数をつけていきます。
0点:なし 1点:まれにあり 2:点時々 3点:最低でも1日1回以上か常にある
✅に点数をつけて合計を出します。
- 見当識障害(Disorientation)
✅ 間に挟まる。物を避けて歩けない。
ドアの開かない側を通ろうとする
✅ 何もないところをぼんやり見つめる
✅ 馴染みの人や動物が認識できない
✅ 家や庭で迷子になる
✅ 視覚や音に対して反応が弱い - 社会的交流や相互反応の変化(Interaction changes)
✅ お客さんや家族、他の動物にイライラ、怖がる、攻撃する
✅ 可愛がられる、近づかれる、挨拶とか撫でられることに興味が減った - 睡眠あるいは行動の変化(Sleep or activity changes)
✅ 夜中にうろうろ、落ちつかない、眠らない、目が覚める
✅ 夜中に鳴く、吠える - 家庭でのしつけを忘れる(Housesoiling,Learning and memory)
✅ 新しいことを覚えにくい。すでにできるはずのコマンドや自分の名前、作業への反応が鈍い
✅ 家の中のトイレ以外の場所に排尿や排便する。外出したい意思表示が減った
✅ 注意散漫、注意力なし 犬の気を引けない - 活動性(activity)
✅ 探索が減った おもちゃや家族、動物と遊ぶ頻度が減った
✅ 無目的にあるく、徘徊が増えた
✅ 旋回運動、くちゃくちゃする、舐める、ぼんやり宙を見つめるという行動を繰り返す - 不安(Anxiety)
✅ 飼い主から離れた時の不安が増えた
✅ 音や見る物に対し過敏になり、怖がる
✅ 場所や環境(外出や新しいところ)を怖がることが増えた
認知症レベル
それぞれの✅につけた点数の合計が
4-15で軽度
16-33で中程度
34以上で重度
この徴候で認知症と出た場合もその原因となる別の病気があることもあります。
認知症だと思っていたら関節炎の痛みだったということもあります。
当てはまるものがあったら、高齢だし認知症だからと諦めずに動物病院を受診してくださいね。
もし、その結果認知症と診断された場合はおうちでできる環境整備や栄養(サプリメントやフード)や薬治療があります。
例えば、行動しやすいように滑らない床にする、脳を刺激する様な知育的なおもちゃもあります。楽しいことで脳を刺激する事で症状を緩和できることもあります。
完全に若いころに戻す事はできませんが、進行をおさえることができるケースもあります。
気になる症状がある場合は是非ご相談くださいね。
上のDISHAAをクリックで入れていけるものが”Benesseのいぬの気持ちのサイト”内に認知症のスコアを改善させるフードを販売しているPURINA提供でありました。“認知機能不全症候群セルフチェック”
可愛い絵で見やすいです。麻布大学の神経科の齋藤 弥代子先生と久世 明香先生が監修されています。
参考文献
Azkona, G. et al. 2009. JSAP 50(2): 87–91.
Neilson, Jacqueline C. et al. 2001. JAVMA 218(11): 1787–91.