多くの手術は痛みを伴います。
いかに痛みを軽減してあげられるか?は、手術の前から始まっているのです。
痛みを安全に軽減するポイントは以下の全ての項目を達成することになります
- 先取り鎮痛 手術の前に鎮痛を開始
- マルチモーダル鎮痛 痛みを取る薬や方法は様々あります。それを単一ではなく複数の薬や投与経路を使うことにより、相加相乗効果が得られるます。また、個々の薬の量も減らせるため副作用も少ないとされます
- 痛みが消失したように見えても術後24時間までは痛みの治療を行う
- ペインスケール *を他の大事な項目(体温)と一緒に術後最低でも3時間までは必須チェック
なお、手術や処置は各々に起こるであろう痛みのレベルに指標があり、それに応じたレベルの鎮痛をすることが大切とされています。指標では軽度の痛みが予測されているのに、多種多量の痛み止めを使う必要はなく、過剰だと不必要な薬剤を投与し、費用も過剰にかかってしまうので適正な使用が求められます。
とはいえ、痛みの感じ方も個体差があるので指標を使用しながら個別の評価をしっかりするのが最も大切です。
必要で行う手術になりますが、どんな手術も痛みは最低限にしてあげたいですね。
*ペインスケール とは動物の痛みの程度を評価するのが難しいため痛み研究会が犬の急性痛(術後痛などの急性期の痛み)の評価を、犬の急性痛ペインスケールとしてまとめたもので、このスケールの各項目は、傷みと関連する症状や行動を示しています。
また、猫は痛みを隠す傾向があることから、犬よりも疼痛を抱えていることに気づくことが難しいとされています。
“動物のいたみ研究会”が株式会社Carelogyと共同で、痛みを抱えている猫は表情に変化が生じるということに着目し、猫の顔の表情をAIで分析することで、猫が「痛みを抱えている顔」をしているか否かを判別できるツールの開発をしました。
精度が90%以上で「猫が痛みを抱えている表情」をAIで判別できるアプリ(CPD: Cat Pain Detector)の開発に成功しましたそうです。無料で使えますので気になる方は試してみてくださいね。
■CPD: Cat Pain Detectorのリンクはこちら↓
https://cpd.carelogy-japan.com/analyze
参考および引用
2022 WSAVA guidelines for the recognition, assessment and treatment of pain
動物臨床医学研究所HP 動物のいたみ研究会 https://dourinken.com/forum/itamiken/
獣医臨床麻酔学―獣医学教育モデル・コア・カリキュラム